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9月 局長メッセージ
9月ももう半ばですが、まだまだ暑い日が続いています。2024年の夏の期間(6〜8月)の日本の平均気温は、昨年と並んで過去最高となったそうです。秋まであと少し、水分補給と室温調整に留意して乗り切りましょう!
今回は、「鳴門海峡の渦潮」のお話をしたいと思います。
鳴門海峡大橋と渦潮 |
平成10年、淡路島と徳島県鳴門市の民間事業者が中心となり「鳴門海峡の渦潮」を世界遺産にしようとの運動が始まり、両県地元市を中心にフォーラムの開催等の活動が行われていました。
こうした動きを受けて平成26年に兵庫・徳島両県をはじめとして行政民間団体で構成する「兵庫・徳島「鳴門の渦潮」世界遺産登録推進協議会」を設立し、学術研究を行っているほか、渦潮の魅力を内外に伝えるため普及啓発活動など、官民学が一体となり様々な取組を進めています。
遊覧船と渦潮 |
世界遺産に認定されるには、自然遺産、文化遺産ともに「顕著な普遍的価値」を有することを証明する必要があります。
現在、兵庫県側が自然分野、徳島県側が文化分野の観点から渦潮の価値を明らかにする学術研究を行っています。その主な項目についてご紹介します。
狭小な鳴門海峡の特徴的な地形と月と太陽の引力による潮の干満差によって、直径約29mもの世界最大級の渦が発生します。
そのほか、渦が連続して発生する渦連、対になって発生する渦対など多用な渦も発生します。
渦連 |
渦対 |
湧昇渦 |
鳴門海峡は浸食度の違う地層からなり、浸食されにくい地層が残り岬が両岸から突出することで、より狭い海峡となりました。鳴門海峡の最狭部の深さは約80mと非常に浅く(海いき)、逆に海峡南北の海底には約160m~200mのお釜状のくぼみ(海釜)が存在します。海いきや海釜も地層の違いが影響しているといわれています。
昔から名勝地として人々を魅了する鳴門海峡の渦潮の景観の素晴らしさについて、さまざまな視点場からの見え方や過去から現在にかけての景観の変化など鳴門海峡の景観の価値についても調査を行っています。
鳴門海峡の渦潮は、日本最古の歴史書「古事記」冒頭でイザナギ・イザナミの2柱の神が天沼矛で下界をかき回して渦を巻く様子と重なるとされている他、古来多くの絵画や文学の題材として表現されてきました。特に絵画では葛飾北斎や歌川広重といった世界的に著名な浮世絵師も渦潮を含む鳴門海峡を描いており、これらの作品を通じて阿波の鳴門の絵画は欧米にも浸透・普及しました。
大阪・関西万博が開催され関西が注目される来年秋に、海外連携先の関係者等を招いた国際シンポジウムを開催し、鳴門の渦潮を国内外にアピールします。
地域住民を中心に海岸清掃活動「3海峡クリーンアップ大作戦」を毎年実施しています。今年は10月26日に淡路島内4海岸(南あわじ市伊毘・阿万、洲本市生石、淡路市田ノ代)、鳴門市千鳥ヶ浜海岸にて実施します。みなさんぜひご参加ください。
3海峡クリーンアップ大作戦 |
世界遺産登録への第一歩は、国の暫定一覧表(暫定リスト)に記載されることから始まります(この暫定リストに記載されたものから、国がユネスコ世界遺産センターへと推薦書を提出し、審査が始まります)。
「鳴門海峡の渦潮」はまだ暫定リストに記載されるところまで至っていないのが現状です。道のりはまだまだ長いですが、目標をしっかりと持って戦略的に活動を進めて行きたいと思います。
9月~11月は「秋の大潮」のシーズン。春と同様、潮の干満差が大きくなり、潮の流れが速くなる日が多く、迫力ある渦潮を見ていただけるのでおすすめです。
皆さん、是非、本物の「渦潮」を体験いただき世界遺産登録への応援をお願いします!
令和6年9月13日
淡路県民局長 川井 史彦
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