総務省の支援事業を活用した地域DXの取組
兵庫県では、デジタル技術を活用して地域課題の解決に取り組む「地域DX」を推進しています。
令和6年度、総務省の新たな地域DX支援策である「地域デジタル基盤活用推進事業(推進体制構築支援)」の支援地域に全国7地域のうちの1地域として本県が選定されました。
同時に本県の伴走支援事業者も選定され、県の呼びかけに応じて地域DXに取り組む意向を示した6市町が、伴走支援事業者が派遣する専門人材の支援を受けながら、県と連携して地域DXのモデル創出に取り組みます。
県では、6市町が進める具体的な地域DXの取組の成果やその過程で得られた知見を、県全体の地域DX推進策の充実や推進体制の強化につなげていきます。
支援地域及び伴走支援事業者
地域
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取組分野
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伴走支援事業者
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代表事業者
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常駐支援事業者
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尼崎市
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「観光DX」を突破口に市政のDXを推進
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(株)電通総研
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Acall(株)
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西宮市
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「窓口DX」で市民の利便性を向上
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Acall(株)
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加西市
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「教育DX」で子どもの学びの質を向上
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(株)ジオグリフ
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多可町
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「保健福祉DX」を中心に持続する地域づくりを推進
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(株)ジオグリフ
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上郡町
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「農業DX」で農業・農村の持続性を向上
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(株)ジオグリフ
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豊岡市
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「配送DX」を中心に地域DXを推進
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(一社)コード・フォー・ジャパン
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県及び各市町の取組概要
兵庫県
県内6市町と連携し、それぞれが掲げるテーマに沿って、課題の明確化から解決策の実証・実装までを行い、地域DXのモデルを創出する。さらに、県内他市町へそのモデルを横展開することを目指し、県内市町と情報共有・協議の場を設ける。これらの取組を、県・市町連携による地域DX推進体制の構築・強化につなげる。
- 兵庫県がひょうご地域DX推進検討会において、6市町におけるDX推進の取組を県内の全市町へ共有。また、DXをさらに進めるべく、兵庫県電子自治体推進協議会の見直しを県内の市町とともに検討(第2回ひょうご地域DX推進検討会にて議論)。伴走支援事業者がこれらの支援を実施。
- 6市町に伴走支援する中で見えてきた現状の課題等に対して、伴走支援事業者が兵庫県(企画部デジタル戦略課)とともに、県および市町向けのDX人材育成メニューの検討を開始。
ビジョン策定・組織能力強化に係る支援 |
- ひょうご地域DX推進検討会の開催等を通じて、県内市町を巻き込みながらDX推進体制を強化。
- 県の取組みであるDX推進リエゾン(市町との橋渡しの役割)と連携して伴走支援を進めることで、県が6市町それぞれのDX推進の実情やリアルな問題・課題を把握。県のきめ細かい支援により、市町におけるDX推進を加速。本事業での事例を地域DXモデルとして、県内の市町へ広域展開し、持続的な地域DX推進の実現につなげる。
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人材育成に係る伴走支援 |
該当なし(兵庫県では他のアウトカムにフォーカス) |
地域DX実装の実行管理に係る支援 |
該当なし(兵庫県では他のアウトカムにフォーカス) |
- 5.地域DX推進に向けた今後の取組方針(令和6年10月時点)
- ひょうご地域DX推進検討会の開催や兵庫県の地域DX推進方策(仮称)策定等を継続支援する。その中で、6市町の現状、課題、成功・失敗のポイントを把握・分析するとともに、6市町で検討された地域DXモデルの整理を支援する。
尼崎市
平成29年、尼崎城再建を契機に「尼崎版観光地域づくり推進指針」を策定し、平成30年、一般社団法人あまがさき観光局を設立。現在、観光振興を通じた交流人口の拡大、産業活性化、シビックプライドの醸成等に取り組んでいるが、成果が見えづらく、環境が日々変化する中、手段であるはずの施策が目的化している面もある。このため、現行施策の課題整理・優先順位付けを行い、データ利活用を軸に各施策を高度化する「観光DX」を進める。また、尼崎市DX推進会議のもと、観光DXの知見を市政全体のDXにつなげる。
- 市の観光部門の職員に対して、過去施策を振り返り、現状の課題を把握するためのヒアリングを実施。
- ヒアリング結果をもとに、観光戦略策定における観光資源の洗い出し、磨き込むコンテンツの具体化、戦略策定(1.尼崎版観光地域づくり戦略推進指針、2.尼崎市観光戦略)を、主に必要なデータの抽出や見える化・活用の面で支援。
- 伴走支援を進める中で、市の複数部門(市のデジタル部門、観光部門、一般社団法人あまがさき観光局)が関わるため、体制や役割分担の明確化が必要であることがわかった。伴走支援事業者が関連各部門と密にやり取りして、進め方に納得感が得られるよう配慮しつつこれらの明確化を主導。
ビジョン策定・組織能力強化に係る支援 |
- 伴走支援を通じて、観光DXを推進するための市の複数部門が関わる体制や役割を明確化。明確な体制と会議体が設定されることで、プロジェクトの進捗や意思決定プロセスが関係者全員にオープンになり、透明性が向上。
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人材育成に係る伴走支援 |
- 伴走支援を通じて、課題把握、データの抽出・整理、分析スキルを習得。
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地域DX実装の実行管理に係る支援 |
- 今後の観光PR施策観光戦略に基づくアクションプランを立案。これにより、尼崎市の観光DX実装を迅速化。
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- 5.地域DX推進に向けた今後の取組方針(令和6年10月時点)
- 引き続き観光戦略策定を支援。当該戦略を次年度以降も継続的・効果的に進めるためのPDCAサイクルの確立(データに基づくKPIの設定などモニタリング方法やデータ抽出方法等)し、市の関係者と合意を図る。
- データを活用し、今後継続的に観光施策を実行・振り返りができる体制構築を目指して、DMP(データ・マネジメント・プラットフォームづくりの検討を支援。
西宮市
2021年度に策定した「西宮市DX推進指針」に沿ってDXを進めているが、その大半は行政内部に関するものであり、市民の利便性の向上なども視野に、より幅広い取組を展開する必要がある。本事業で特に取り組みたいのは、市民生活に直接関わる窓口DX(書かない・待たない・回らない・行かない市役所)の推進となるが、市民との協働により地域DXを進めるための活動拠点整備などにも取り組みたいと考えている。また、これらの取組を通じて得られた知見は、庁内の指針などに組み込むなどにより、市全体のDX推進のために生かしていく。
- 本事業開始時は、市の複数部門が関わる、窓口DX推進の実務を担う組織が立ち上がっていなかったが、伴走支援事業者が関連各部門と密にやり取りして、合意形成を行った結果、複数部門を横断した窓口DX推進チームの立上げが完了。
- デジタル庁BPRアドバイザー派遣事業を活用し、職員が市民役になりきって市民目線で窓口課題の抽出を行う窓口体験調査の計画、準備を行い、10月下旬に実施。伴走支援事業者が窓口DX推進チームを支援。
- 庁内職員を対象としたDXよろず相談会を開催し、職員の様々な業務課題のヒアリングと解決に向けた提案を実施。
ビジョン策定・組織能力強化に係る支援 |
- 伴走支援を通じて、窓口DXを推進するための市の複数部門における連携体制を明確化。伴走支援事業者が提供したフレームワークが活用され、準備段階での十分な検討により関係者間の認識が統一されたことで、庁内の合意形成が円滑に行え、推進体制の構築につながった。
- DXよろず相談会を通じて、庁内のDX機運を醸成。
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人材育成に係る伴走支援 |
- 伴走支援を通じて、円滑なプロジェクト管理手法を習得。
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地域DX実装の実行管理に係る支援 |
- 窓口体験調査等を通じて、窓口DXを進める方向性や、次年度以降の窓口DX実装に係る具体策及び計画の検討準備を進めた。これにより、西宮市の窓口DX実装を迅速化。
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- 5.地域DX推進に向けた今後の取組方針(令和6年10月時点)
- 推進チームの運営やマネジメントを通じて、市のデジタル推進課職員が自発的にプロジェクトマネジメントを行えるよう伴走し、次年度以降の持続的な推進体制の構築につなげる。
- 窓口体験調査の結果も踏まえて、次年度以降の窓口DX実装に係る具体策及び計画を検討。
加西市
2020年、GIGAスクール構想のもと、児童生徒の1人1台端末を実現したが、教員による活用差が大きく、整備した環境を十分に活かせているとは言い難い。課題は、第一に、個別最適な学習の前提となる個人の興味関心や学習進度の把握。第二に、加西版STEAM教育を進めるために必要な非認知能力の指標開発。第三に、ICT活用による教職員の働き方改革。第四に、校務支援システムを活用した生涯にわたる学びのログの蓄積・活用。以上の課題に取り組み、加西市で生まれ育つ子どもの学びの質を高める。
- 教職員の働き方改革及び個別最適な学習に向けた仕組みづくりとして、市が今後導入する次世代型校務支援システムの仕様検討を支援。R8年度の第4期加西市教育大綱及び加西市教育振興基本計画の改訂(R7年度改訂予定を見据えて、多様なステークホルダー(教育委員、教育委員会事務局、学校現場、社会教育委員等)に対してのヒアリングを行い、問題点の洗い出しと整理を実施。
- 伴走支援事業者が仲介して、加西市教育委員会だけでなく、すでに加西市が導入しているデータ連携基盤を所管する政策部情報課や、政策課、産業課も巻き込んだ体制で事業を推進。
ビジョン策定・組織能力強化に係る支援 |
- 伴走支援を通じて、教育DXを推進するための多様なステークホルダーとその課題等を見える化。これまで教育の文脈では義務教育が中心になる傾向が強かったが、様々な部門を横断して取組む意識が醸成されてきている。
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人材育成に係る伴走支援 |
- 伴走支援を通じて、DX推進のための業務プロセスの意識付け、プロジェクトマネジメント等の重要性を認識。
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地域DX実装の実行管理に係る支援 |
- 教職員の働き方ガイドラインの策定、次年度以降の次世代校務支援システムの導入体制整備・計画策定、教育データ活用に向けたロードマップ等を策定。これにより、加西市の教育DX実装を迅速化。
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- 5.地域DX推進に向けた今後の取組方針(令和6年10月時点)
- 加西市が推進するひょうごTechイノベーションプロジェクト事業(1.STEAMプログラム開発授業の充実、2.非認知能力指標の作成・評価、3.教職員の授業力アップ)とも連動させる形で、加西市教育委員会が目指す将来像を具体化。次世代型校務支援システムの導入・運用に際し教職員の働き方改革ガイドラインの策定を支援する。
- 教育DXにおけるステークホルダーとその課題等を見える化する。政策部情報課のスマートシティ会議と歩調を合わせながら、教育データ活用における個人情報の取扱い等を整理した上で、教育データ活用のロードマップ作成、来年度事業計画への落とし込みを支援する。さらに、生涯学習に範囲を広げてPDS構想のロードマップの作成を支援する。
多可町
県中央部の中山間地域に位置する本町では、急激な人口減少とこれに伴う歪な人口構成で地域の担い手不足が顕在化し、まちの持続可能性が危ぶまれる状況にある。本事業では、第一に福祉相談のDXに取り組む。ケアプラン作成支援システムの導入より職員の働き方をDXし、相談業務の質を高める。第二に子どもの予防接種のDXに取り組む。一連の手続をデジタル化し、医療機関等の負担軽減と、子育て家庭の利便性向上を図る。これらの取組を通じて得た知見を、町政全体のDXにつなげる。
- 多可町が今後導入する子どもの予防接種アプリや、ひょうごTECHイノベーションプロジェクト事業を活用して導入を検討するケアマネージャー業務デジタル化の仕様検討を支援。
- 庁内全体へのDX推進支援として、まずはじめに「おくやみ配信」を基点にした各課横断の業務プロセスを整理した。ノーコードアプリの利用に係る検討を開始、各課が利用する業務システムのリストアップを実施。
- 第1回DX兼行革推進本部会議(6月25日)に伴走支援事業者が出席し、目指す姿「デジタルで実現する快適で持続可能な暮らし」に向けて町職員参加型のワークショップの実施を支援。また、地域情報化アドバイザーである先進事例を進める鹿児島県肝付町デジタル推進課職員の招聘を伴走支援事業者がアレンジ。取組の経緯・実績・課題等について把握した。
ビジョン策定・組織能力強化に係る支援 |
- ワークショップや地域情報化アドバイザーの招聘等により、庁内全体でDX推進を考える機会をつくり、また企画秘書課、財政課、伴走支援事業者が様々な部門とDX推進に係るコミュニケーションを取ることで、庁内全体のDX推進に係る機運を醸成。
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人材育成に係る伴走支援 |
- 子どもの予防接種アプリの業務フローを検証する中で、市民視点・事業者視点の考え方、ステークホルダーの洗出しが重要性を認識。
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地域DX実装の実行管理に係る支援 |
- 庁内情報システムの総合的な中期計画、DX業務改善計画の重要性を認識。今後策定予定。予種アプリの仕様を策定。これらにより、多可町の保健福祉DX実装及び庁内全体でのDX推進を図る。
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- 5.地域DX推進に向けた今後の取組方針(令和6年10月時点)
- これまで町内の各課が個別に導入してきた情報システムのリストアップを実施したうえで、庁内情報システムの総合的な中期計画の立案、DX業務改善計画の策定を支援する。
- 予防接種アプリについて、システム導入と運用体制の整備を支援する。ケアマネージャー業務デジタル化については、ひょうごTECHイノベーションプロジェクト事業と連動する形で、次年度以降の事業計画策定を支援する。
上郡町
県南西部、岡山県境に位置する本町では、人口減少により主力産業である農業の担い手不足が顕在化。温暖な田園地帯の魅力を活かして移住促進策に力を入れているが、中長期的に農業・農村を持続させるためにはスマート農業による省力化、販路拡大も含めた農業DXに取り組む必要がある。現在、圃場への温湿度センサーの設置、スマートグラスを活用した遠隔営農指導などの取組を進めているが、ICTに不慣れな農業者も多く、スマート農業、農業DXの実践を現地で支援する体制整備も進める。
- 上郡町農林振興課が定常業務で手一杯な実情がある中で、伴走支援事業者が主導する形で農業DX推進体制構築を支援。県公式オンラインショップ「ひょうごマニア(H5MANIA)」等へ地元農産物を出品できる仕組み構築に向け、外部ステークホルダーであるECサイトの運営者や農家の方への声掛け・巻き込みを実施。上郡町のみでなく、有志農家や事業者と連携した体制づくりを進めている。
ビジョン策定・組織能力強化に係る支援 |
- 伴走支援を通じて、農業DXを推進するための上郡町・有志農家・事業者の連携した体制を構築。伴走支援の中で、出口側のDXを生産側に波及させていくことが現実的であるという気づきのもと、体制構築を進めている。
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人材育成に係る伴走支援 |
- 農業DXに関しては、スマート農業等生産技術支援を進めることが農業DXであるとの認識があったが、出口側からDXを進めることの重要性を認識するようになった。
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地域DX実装の実行管理に係る支援 |
- 農業DX推進に向けた地元農産物を出品できる仕組み・体制ついて、次年度以降の事業計画等を策定。また、上郡町が導入済みのDXツールの次年度以降の活用計画等を策定。これらにより、上郡町の農業DX実装を迅速化。
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- 5.地域DX推進に向けた今後の取組方針(令和6年10月時点)
- DXを所管する総務課・本事業の窓口である農林振興課、合わせて地域振興課との協議の場を伴走支援事業者が主導して作り、上郡町における持続的なDX推進につなげる。また、上郡町が導入済みのDXツール(スマートグラス等)の運用・評価を行い、次年度以降の有効な活用計画等の策定を支援する。
- 地元農産物を出品できる仕組み及びその物流を支援する体制の構築を支援する。その上で、これらの仕組み・体制が次年度以降も持続的に活用できるよう事業計画を策定し、農業DX支援機関として機能するよう支援する。
豊岡市
県北部の山間部に位置する本市は、多くの狭い谷筋に住居が点在するため配送効率が悪く、今後配送人材の不足により日常の配達が困難になる可能性がある。そこで、大手配送業者、但東地域の住民・自治会等と連携し、山間部におけるドローン等を活用した小口配送のモデル構築に取り組む。また、ドローンのような分かりやすいツールの活用によりDXを可視化し、直接・間接に関与いただくことなどにより住民のDXへの関心・受容性を高め、地域DXが進む土壌をつくる。
- 配送DXの実装に向けては、地域住民とのコミュニケーションが重要であり、ドローン配送説明会、意見交換・ワークショップ等を開催しながら、伴走支援事業者が住民合意形成を主導。(奥矢根区、資母地区コミュニティを中心に進行中)
住民合意形成にあたっては、1.初期調査で住民側のストーリー、地域の課題や期待を聞き取り、2.それに合う形で文脈を伝達対話しながら信頼関係を構築し、3.前向きな協力者を識別の上、4.まずは最小単位でのグループの形成を行う、といった段階設定が効果的ではないかという示唆を得た。
- 伴走支援事業者が関連ステークホルダー(住民、民間企業等)と密にやり取りして、次年度以降の実装を見据えた実証実験を年内に実施すべく調整を進めている。
- 配送DXの先進自治体である西米良村への訪問を、伴走支援事業者がアレンジ(7月17日に訪問)。兵庫県、豊岡市のDX担当者とともに現地を視察し、すでに実装されている同様事業の経緯・実績・課題等について把握した。
- これらの取組と並行して、市のDX担当部門職員向けに、DXスキル(サービスデザイン、ファシリテーション、データ利活用)の研修を実施。
ビジョン策定・組織能力強化に係る支援 |
- 住民合意形成を伴走支援事業者が主導して着実に進めることで、住民を含むステークホルダーを巻き込んだ配送DXを推進するための体制を強化。
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人材育成に係る伴走支援 |
- DX研修により、住民参画やサービスづくりに有効な手法等の知識を習得。
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地域DX実装の実行管理に係る支援 |
- 実証実験を通じて、配送DXの中長期実装計画を検討。これにより、豊岡市のDX推進を迅速化。
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- 5.地域DX推進に向けた今後の取組方針(令和6年10月時点)
- 年内の実証実験実施に向け、具体的な配送モデル検討・住民との実証実験仕様の調整を支援する。
- 今後のより具体的な住民合意形成や実証実験調整の中で、市のDX担当職員が、実践的にサービスデザイン・データ利活用知識等を活かせるよう、伴走学習(ライブトレーニング)を実施する。