更新日:2017年7月25日

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阪神・淡路震災復興計画

阪神・淡路震災復興計画 (平成7年7月)

序説

策定の趣旨

平成7年1月17日に阪神・淡路地域を直撃した、マグニチュード7.2の直下型大地震という自然の猛威の前に、機能的に高度に発達した近代都市がいかに脆弱な一面を持っていたか、我々は認識を改めざるを得なかった。

この復興計画の策定にあたっては、まず「都市再生戦略策定懇話会」(座長:新野幸次郎神戸大学元学長)から3月に提言を受けた「阪神・淡路震災復興戦略ビジョン」に基づき、「阪神・淡路震災復興計画-基本構想-」を策定した。

さらに、「ひょうごフェニックス県民フォーラム」をはじめとする被災者からの提言や県民アンケート、各分野にわたる復興県民会議、学術団体、市民団体、県民等からの提案をもとに、「阪神・淡路震災復興計画策定調査委員会」(委員長:三木信一神戸商科大学学長)から、具体的な復興事業を検討・立案した「阪神・淡路震災復興計画」の提言がなされた。

これを受け、県の総合計画「兵庫2001年計画」のフォローアップ作業における検討内容を踏まえ、被災各市町の復興計画との調整を図りつつ、300万人を超える被災地域の住民の一日も早い生活の安定と被災地の速やかな復旧・復興をめざしてこの復興計画を策定した。

計画に位置づけた具体的な事業は、被災者、被災団体、被災市町、兵庫県、兵庫県民等のあらゆる人々、団体、地域の共同事業として推進することとする。
 

計画の役割・性格

この復興計画は、次のような役割・性格を持つものとして策定した。

1 震災復興のための、兵庫県の行政計画である。

2 被災者の自立復興を支援する計画である。

3 市町の復興計画の指針となり、それを支援する計画である。

4 国・公団等に対しては、必要な復興事業の推進や支援を要請するものとなる。

5 県民や各種団体、民間企業に対しては、生活・事業再建や計画実現に向けた取り組みへの積極的な参画を促す指針となる。


目標年次

震災による被害の規模とその及ぼした影響から、復興の目標年次は、2005年(平成17年)とする。


対象地域

この計画の対象地域は、兵庫県内の災害救助法対象地域である下記の「10市10町」とする。

神戸市、尼崎市、明石市、西宮市、洲本市、芦屋市、伊丹市、宝塚市、三木市、川西市、津名町、淡路町、北淡町、一宮町、五色町、東浦町、緑町、西淡町、三原町、南淡町

復興事業の内容については、これら被災市町を越えた地域も含む。


計画推進上の課題

大都市直下型地震災害からの復興は、被災者、被災団体、地方公共団体等にとって前例のない困難を伴うものである。

このため、復興事業の推進にあたっては、以下の点に留意しつつ、その目標の達成を目指す。


(1) 住民主体によるまちづくり

震災で住み慣れた家を失い、仮設住宅等での生活を余儀なくされている多くの人々は「一日も早く以前のような暮らしがしたい」と願っている。住宅の再建やまちの復興は、こうした被災者の気持ちを大切にしながら進めなければならない。

被災地では、自らの手でまちづくりを進めようとする気運が高まり、自主的な小さなグループや「まちづくり協議会」が生まれつつある。これらの活動を支援し、住民主体のまちづくりを進めるため、新しい住民参加のあり方を推進する。


(2) 人と自然が共生する環境創造

復興の過程で健康を犠牲にしたり、環境を破壊したりしないこと、被災地のみならず他の地域の発展に役立つ復興でなければならないこと、さらには、自然的風土の保全や都市環境をより高める視点からの対応を図ることが必要である。


(3) 民間活力による復興を促進する規制緩和

被災地域の早期復興を図るためには、民間活力の活用が不可欠であり、そのための各種の制度改正や規制緩和が必要である。


(4) 国内外の多くの参加と協力による復興

震災からの復興の成否は、被災地域の自立復興への努力が基本であるが、その成果は単に被災地域の復興にとどまるのみならず、関西や日本の経済・文化の維持発展に密接に関連するものである。同時に被災地域復興のための住宅整備、福祉のまちづくり、文化や経済の復興、防災都市づくりには、新しいシステムや技術の導入が不可欠である。このため、国内外の多くの参加と協力を求める。


(5) 行財政改善の推進

県財政は、震災により当分の間、県税収入の減収と震災復旧・復興のための多額の財政支出が見込まれ、厳しい運営を余儀なくされることとなる。

このため、これまでにも増して簡素で効率的な行財政運営に努め、重点的・計画的な事業の推進を図る。


(6) 政府の地方公共団体への支援

復興に必要な地方公共団体の財政負担は膨大である。また、大都市直下型地震からの復興は、今後のモデルとして国内外から注目されており、政府としても復興についてとるべき政策を明らかにする必要がある。

このため、政府に対し復興計画の円滑な推進を図るべく法的な措置を含めた万全の支援を求める。


(7) 復興事業のマネジメント

復興事業の推進は、10カ年の長期に及ぶものであるので、社会情勢や県民ニーズの変化、技術革新の進展等の条件変化に対応し、計画の変更も含めて柔軟で機動的な運用を図ることとし、計画のフォローアップや計画推進上の課題等について、県民各界各層から幅広い意見や提言を得るための組織を設置する。

理念と目標

基本方針

(1) 大震災発生から約6カ月を経過した現在もなお、緊急に処理すべき復旧課題がある。被災県民の生活を支援していくための応急対策、がれき処理対策、道路・港湾等の復旧、社会福祉施設、文教施設等の復旧などである。

これらの問題を、総合的、効率的、精力的に処理しつつ、それに並行して本格的な復興へ取り組みを進めなければならない。

被災者の中には、精神的、物質的に大きな被害を受け、将来にかけた人生の夢や展望が持てない人、目の前の現象しか考える余裕が無くなっている人が少なくない。

これらの人々が自力復興への意欲と活力を持ち、新しい生活を切り開くためには、どれほどの誘導と支援が可能となるかが復興の鍵を握っており、本計画は、これらの直面する課題に対し、きめ細かい様々な政策的努力を重ねることを前提とする。


(2) 今回の地震による被害を、これまでの「利便」「効率」「成長」を重視する都市文明への大きな警告と受けとめ、被災地の責任として、「安全」「安心」「ゆとり」をキーワードとする都市を復興しなければならない。

国の理解を得ながら、大災害の現場から得られた教訓を生かし、従来の考え方を越えた都市基盤の整備とそれを活用したコミュニティ形成のモデル地域をめざすこととする。


(3) 復興にあたって重要なことは、単に1月17日以前の状態を回復するだけではなく、新たな視点から都市を再生する「創造的復興」を成し遂げることである。そのため、「兵庫2001年計画」の総合的点検において示された「21世紀初頭の新たな兵庫の創造についての基本的な考え方」と「被災地域の長期ビジョン」のうえにたって、関西国際空港開港、大阪湾ベイエリア整備、明石海峡大橋建設等により世界都市関西の形成が期待されるなか、阪神・淡路の文化的特性を活かし、新しい都市文明の形成をめざすこととする。


基本理念

-人と自然、人と人、人と社会が調和する「共生社会」づくり-

(1) 「兵庫2001年計画」の理念に基づく先導的な復興事業を、この地域において推進する。

(2) 高齢化・成熟化の進む21世紀へ向けて、一人ひとりが主体的に自らの生活を創造しながら、共生する社会づくりを進める。

(3) この地域のもつ文化的風土のうえにたって、外国に開かれたまちづくりを進める。

(4) 自然への畏敬の念をもち、自然と共生しながら、命を守り育む、アメニティ豊かな都市づくりを進める。


基本目標

被災者一人ひとりの復興には、地震直後の人命救助、救援活動に続く生活再建や、こころの健康の回復を急ぐなかで、安全で安心して快適に暮らせることが何よりも優先されるべきである。

また、被災地の阪神・淡路地域の復興には、文化的・経済的な都市集積の復旧に加え、震災前にも増して、京阪神都市間のネットワークを広げ、東西交通の要衝、日本文化と外国文化の接点としての役割を果たして、世界都市関西の中枢を担い、文化首都圏の主都市たる機能と風格を持った地域づくりが目標となる。

地域的に見れば、神戸の都市復興イメージは、世界都市関西の国際経済機能、世界との交流・協力機能が更に発展し、外国文化と日本文化の融合した日本の中でも独特の“文化”を持つ、自由で開放的な洗練された国際港湾都市である。さらに、海と山に囲まれた都市として、世界の中でも代表的な美しい景観を一刻も早く再生することである。

阪神地域のそれは、被災した6市が、復興に向かって描いたそれぞれの都市のイメージを見ても、総体的には学術、芸術等の施設や人材の集積に支えられた、新たな産業や芸術の創造空間であるとともに、芸術、文化、教育、産業等の分野における高度で複合的な機能を持つ各都市の個性が融合した新たな生活文化創造都市圏である。

そして、淡路地域のそれは、明石海峡大橋によって南北を結ぶ地域連携軸としての役割を担いつつ、伝統文化に支えられる世界に開かれた公園島・国際公園都市であるといえる。

こうした復興目標を達成するために作成する復興計画は、次に示す領域ごとに具体的な目標を設定する。


(1) 21世紀に対応した福祉のまちづくり

被災した住宅の復興にあわせ、高齢者や障害者をはじめとするすべての人々が、安心して暮らせるコミュニティの形成をめざし、「すこやか長寿大作戦」にもとづき、社会福祉施設等の整備を進めるほか、地域活動やボランティア活動のネットワーク化などを通じて、共に生きるノーマライゼーションの理念を基調とし、保健・医療・福祉機能が連携した生き甲斐のもてる地域づくりを進める。


(2) 世界に開かれた、文化豊かな社会づくり

阪神・淡路地域は、すぐれた生活環境のもと、海外文化を積極的に受け入れ日本を代表する個性あふれる市民文化を形成してきた。今後、生涯学習のネットワーク化などを通じて文化豊かな、ゆとりとアメニティに富む国際性豊かなまちづくりを推進する。


(3) 既存産業が高度化し、次世代産業もたくましく活動する社会づくり

21世紀の成熟社会に向けた新たな産業構造を構築するため、既存産業の高度化、新分野進出といった従来からの取り組みに加え、新産業創造システムの形成、高度集客都市群の形成、国際経済文化機能ネットワークの形成を本格復興の3つの重要課題とし、計画的な復興に取り組む。また、事業推進の際には、民間能力の活用を図りつつ、多様な産業基盤整備プロジェクトの適切な推進を図る。


(4) 災害に強く、安心して暮らせる都市づくり

大震災の反省と教訓を踏まえて災害に強い安全なまちづくりをめざして、地域防災計画を見直し、防災体制の充実強化を図るとともに、総合的な防災情報システム、防災拠点など防災機能の整備を進める。


(5) 多核・ネットワーク型都市圏の形成

被災した阪神・淡路地域の復興にあたり、新たに都市核の整備が進む大阪湾ベイエリア地域や山陽自動車道沿線の内陸部との多核・ネットワーク型都市圏を形成し、安全で環境保全に配慮したゆとりある地域整備を進める。

施策体系

1.21世紀に対応した福祉のまちづくり

(1) バリアフリーのまちづくりの推進

(2) 良質な復興住宅の供給

(3) 住民の安心とふれあいを支える拠点の整備

(4) 人的ネットワークシステムの整備

(5) 災害医療システムの整備


2.世界に開かれた、文化豊かな社会づくり

(1) 地域の芸術文化活動の復興

(2) 学校・文化財の復旧の支援

(3) 街並み・景観の復興

(4) 参画型生涯学習システムの推進

(5) 国際交流拠点の整備とプログラム開発

(6) 都市と農山漁村の提携


3.既存産業が高度化し、次世代産業もたくましく活動する社会づくり

(1) 国内外へのアクセス整備と産業基盤づくり

(2) 国際経済文化機能ネットワークの形成

(3) 既存産業の高度化

(4) 新産業の創造・育成

(5) 農林水産業の振興

(6) 雇用の安定と地域産業を支える人材の育成


4.災害に強く、安心して暮らせる都市づくり

(1) 地域防災基盤の整備

(2) 防災施設の整備

(3) 防災マネージメントの充実

(4) 防災システムの充実

(5) 地域防災力の向上

(6) 調査研究体制等の強化


5.多核・ネットワーク型都市圏の形成

(1) 被災地における人にやさしいまちづくり

(2) 被災地区の整備と連携した新しい都市づくり

(3) 陸・海・空にわたる多元・多重の総合交通体系の整備

(4) 都市基盤の早期復興

(5) 防災拠点等の整備

(6) 災害に強い都市と農山漁村の基盤整備

復興事業計画

21世紀に対応した福祉のまちづくり



世界に開かれた、文化豊かな社会づくり



既存産業が高度化し、次世代産業もたくましく活動する社会づくり



災害に強く、安心して暮らせる都市づくり



多核・ネットワーク型都市圏の形成


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