有毒植物による食中毒について
ハイキングに行って山菜やキノコを採ったり、きれいな花を観賞用に植えたりするなど、私たちは植物に触れる機会が多くあります。
しかし、植物やキノコには有毒成分(植物性自然毒)を含むものがあり、間違えて摂取すると、嘔吐、下痢やめまいなどの中毒症状を呈し、最悪の場合死亡する場合もあります。厚生労働省の食中毒統計によると、年間3万人~4万人の食中毒患者のうち、死亡例の原因物質は、「自然毒」によるものが高い割合を占めています。素人判断はやめて、食べられる種類かわからないものは絶対に食べないようにしましょう。
- 間違えて食べてしまったことがわかったら…
- (1)すぐにはき出すこと。
- (2)一刻も早く病院で受診すること。
- (3)受診の際には何を食べたかを医者に伝えること。
- (4)原因と疑われる食品、残っている材料は捨てないこと。
- (5)受診の際、(4)を持参して治療の参考にしてもらうこと。
- 食べる前に注意すること!
- (1)食べられる種類かはっきりとわからないものは絶対に食べないようにしましょう。
- (2)新芽や根だけで種類を見分けることは困難です。少しでも不審があれば食べないようにしましょう。
- (3)採取した植物は、安易に人にあげたり、もらったりしないようにしましょう。
トリカブト等による食中毒について
わが国には、身近な有毒植物が約200種類あると言われています。
平成24年4月、北海道で、山林で採取した「トリカブト」を「ニリンソウ」と思い込み、おひたしにして食べた家族3名が、吐き気、嘔吐、全身倦怠感の症状を呈し、病院へ緊急搬送され、2名の方が亡くなりました。
その他にも、食中毒としては、「スイセン(下記)」「チョウセンアサガオ(下記)」「バイケイソウ」「ハシリドコロ」等によるものが多く発生しています。症状は、有毒植物の種類によって異なりますが、有毒植物を食べた直後、短時間で発症し、嘔吐、下痢、瞳孔散大、手足のしびれ、幻覚等を呈し、死亡する例もありますので、わからないものは絶対に食べないようにしましよう。
また、保育園や小学校などの自家栽培による発育不良のじゃがいもによる食中毒事例も多く見られます。
じゃがいもの芽や古くなったり、日光に当たって緑色になった皮、未熟な小芋などにはソラニンやチャコニンという有毒成分が多く含まれています。
ソラニンなどは、加熱してもそのほとんどが分解しませんので、じゃがいもを調理する際は、皮を良くむき、特に芽の部分を完全に除去しましょう。
平成21年4月、兵庫県内の福祉施設において、畑で採取した植物を「ニラ」と思い込み、卵と混ぜて調理して食べた12名中8名が、すぐに嘔吐、下痢等の症状を呈したという、食中毒事例が発生しました。
県の健康福祉事務所が調査したところ、「スイセンの葉」を「ニラ」と誤認して採取、調理し食べていたことが分かりました。
- スイセンについて
ヒガンバナ科。観賞用に栽培される多年草。多くの園芸種があるが、野生化したものもある。
地下に卵円形の鱗茎(りんけい)があり、早春、葉の間から花茎(かけい)を出し、先端に花を付ける。
毒性分は、リコリン、タゼチン等のアルカロイドで全ての部位が有毒である。
葉がニラとよく似ており、ニラと誤認して食べ中毒症状を起こすという事例が度々報道される。ニラとの違いは次のとおりである。
- スイセンの葉は臭いがない(ニラは葉から独特の強い臭いを放つ)。
- スイセンは鱗茎(りんけい:厚い鱗片が重なって球形になったもの)を持つ(ニラは髭(ひげ)根で鱗茎を持たない)。
- スイセンを誤食した際の症状について
初期に強い嘔吐があり、大半が吐き出されるため症状が重篤に至ることは稀である。
また、瞳孔散大、口渇、心拍促進、呼吸の乱れ、けいれん、幻覚等の症状が現れ、通常は一過性で回復するが、大量に摂取すると脱力、けいれん、昏睡を経て死に至ることもある。
家庭菜園や畑などのそばでスイセンなどの有毒植物を栽培するのは危険ですので、絶対にしないでください!
平成20年1月、兵庫県内で、家の畑から引き抜いた植物の根を使って調理した「きんぴらごぼう」を食べた人(2名)が、約30分後にめまい、沈鬱となり、以後瞳孔拡大、頻脈、幻視等の症状を呈して、入院するという食中毒事例が発生しました。県の健康福祉事務所が調査したところ、「ごぼう」と「チョウセンアサガオの根」を間違えて採取、調理し食べていたことがわかりました。
チョウセンアサガオは観賞用としても流通しているため、今後間違えて食べてしまう可能性がありますので、皆様よく注意してください!
- チョウセンアサガオについて
東南アジア原産で、江戸時代から明治時代に日本に入ってきた帰化植物。6月~9月にかけて開花するナス科の一年草です。曼陀羅華(まんだらけ)とも呼ばれ、アサガオに似た花が咲くことに由来します。草丈は1m以上になり、全体に特異な臭いを呈します。
ケチョウセンアサガオ、ヨウシュチョウセンアサガオなど多くの種類があります。
花が美しいので、観賞用として家庭で栽培されることもあります。その反面、全草(花、葉、茎、根などの植物の全ての部分)に強い毒(アトロピン、スコポラミン等のアルカロイド)が含まれています。
チョウセンアサガオとゴボウの花と葉は見違えることはないと思いますが、根はよく似ています。地上部が枯れた時期には間違って採取される可能性があります。(「ごぼう」はふつうは開花前に採取されるため、ごぼうの花を目にすることはあまりありません。)
- チョウセンアサガオ摂取時の症状について
瞳孔散大、口渇、心拍促進、呼吸の乱れ、けいれん、幻覚などの症状があらわれ、通常は一過性で回復しますが、大量に摂取すると脱力、けいれん、昏睡を経て死に至ることもあります。
- 間違えて摂取する事例について
- (1)自宅のごぼう畑にチョウセンアサガオが混じって咲いていたが、そのままにしていたため、葉などは枯れて根だけが残り、その根を「ごぼう」と間違えて採取、きんぴらごぼうに調理して食べた結果、中毒になった事例
- (2)自宅の庭に自生していたチョウセンアサガオの種をゴマと間違えて、おひたしにかけて食べた結果、中毒になった事例
- (3)チョウセンアサガオの苗をハーブと間違えて販売していたのを購入し、ハーブとして葉を炒めて食べた結果、中毒になった事例
- チョウセンアサガオは観賞用として流通していますが、家庭菜園、畑などのそばで栽培していますと、ごぼうなど食べることのできる野菜と間違えて採取・調理し、食べた結果、食中毒になる事例が多々あります。平成20年1月に兵庫県で起こった事例は、チョウセンアサガオを数年前にごぼう畑そばの花壇に植えていた経緯があり、その種が何らかの原因でごぼう畑に入ってしまった結果、チョウセンアサガオとごぼうが混じってしまったため起こってしまいました。
家庭菜園や畑などの近くでチョウセンアサガオなどの有毒植物を栽培するのは危険ですので、絶対にしないでください!!
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