新型コロナウイルス感染症の経口抗ウイルス薬(飲み薬)について
経口抗ウイルス薬とは、新型コロナウイルス感染症の患者に投与できる治療薬(飲み薬)のことです。
ア、イ、ウとも一般流通(一般の医薬品と同様に卸会社を通じた流通のこと)が開始しています。
- ア「エンシトレルビルフマル酸」(販売名:ゾコーバ錠125mg):令和4年11月22日に緊急承認されました。
- ※「エンシトレルビルフマル酸」(販売名:ゾコーバ錠125mg)については、令和5年3月31日から薬価収載品として、一般流通が開始されます。
- イ「ニルマトレルビル・リトナビル」(販売名:パキロビッドパック):令和4年2月10日に特例承認されました。
- ※「ニルマトレルビル・リトナビル」(販売名:パキロビッドパック)については、令和5年3月22日から薬価収載品として、一般流通が開始されたため、「パキロビッド登録センター」を通じた国購入品の配分は終了しました。
- ウ「モルヌピラビル」(販売名:ラゲブリオ):令和3年12月24日に特例承認されました。
- ※「モルヌピラビル」(販売名:ラゲブリオ)については、令和4年9月16日から薬価収載品として、一般流通が開始されたため、「ラゲブリオ登録センター」を通じた国購入品の配分は終了しました。
経口抗ウイルス薬は、新型コロナウイルス感染症の患者で、医師が必要と判断した方に処方されます。
発熱等の症状がある場合、まずは地域の医療機関(かかりつけ医等)に電話で相談・受診予約をしてください。
(1)「エンシトレルビルフマル酸」(販売名:ゾコーバ錠125mg)の場合
基本条件
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- 投与の時点で症状が発現してから遅くとも72時間以内
- 12歳以上の小児及び成人
- 次の投与禁止項目に該当しないことを確認してください
- ① 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- ② 併用を禁止されている薬剤を投与中の患者(併用禁忌)
ピモジド、キニジン硫酸塩水和物、ベプリジル塩酸塩水和物、チカグレロル、エプレレノン、エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン、エルゴメトリンマレイン酸塩、メチルエルゴメトリンマレイン酸塩、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、シンバスタチン、トリアゾラム、アナモレリン塩酸塩、イバブラジン塩酸塩、ベネトクラクス〔再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の用量漸増期〕、イブルチニブ、ブロナンセリン、ルラシドン塩酸塩、アゼルニジピン、アゼルニジピン・オルメサルタンメドキソミル、スボレキサント、タダラフィル(アドシルカ)、バルデナフィル塩酸塩水和物、ロミタピドメシル酸塩、リファブチン、フィネレノン、リバーロキサバン、リオシグアト、アパルタミド、カルバマゼピン、エンザルタミド、ミトタン、フェニトイン、ホスフェニトインナトリウム水和物、リファンピシン、セイヨウオトギリソウ(St.John's Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品
- ③ 腎機能又は肝機能障害のある患者で、コルヒチンを投与中の患者
- ④ 妊婦又は妊娠している可能性のある女性
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投与時の注意点
- ※本剤の使用にあたっては、併用禁忌及び併用注意の薬剤が多数あることから、処方時には、服薬中のすべての薬剤を確認してください。
- ※重度の肝機能障害患者(コルヒチンを投与中の患者を除く)投与は推奨されません。中等度肝機能障害患者においては、治療上の有益性が上回ると判断される場合にのみ投与を考慮することとされています。
- ※軽度、中等度腎機能障害患者において用量調節は不要と考えられる。ただし、重度腎機能障害患者は治療上の有益性が上回ると判断される場合にのみ投与を考慮することとされています。
- ※授乳婦は、授乳しないことが望ましいとされています。
- ※一般に、重症化リスク因子のない軽症例では薬物治療は慎重に判断すべきということに留意して使用してください。
- ※本剤においては、重症化リスク因子のある軽症例に対して、重症化抑制効果を裏付けるデータは得られていません。
- ※重症度の高いCOVID-19患者に対する有効性は確立していない。なお、重症度が高いとは、概ね中等症Ⅱ以上が該当すると考えられています。
- ※高熱・強い咳症状・強い咽頭痛などの臨床症状がある者に処方を検討してください。
- ※小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施しておりません。
- ※本剤の有効性・安全性に係る情報は限られていること等を踏まえ、本剤の使用については、日本感染症学会から示されている、「COVID-19に対する薬物治療の考え方第15.1版」(2023年2月14日)(PDF:685KB)の記載を参考にして下さい。
(2)「ニルマトレルビル・リトナビル」(販売名:パキロビッドパック)の場合
基本条件 |
- 投与の時点で発症日から5日以内
- 成人または12歳以上かつ体重40kg以上の小児
- 次の投与禁止の項目に該当しないこと確認してください
- ① 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- ② 併用を禁止されている薬剤を投与中の患者(併用禁忌)
アンピロキシカム、ピロキシカム、エレトリプタン臭化水素酸塩、アゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン、アミオダロン塩酸塩、ベプリジル塩酸塩水和物、フレカイニド酢酸塩、プロパフェノン塩酸塩、キニジン硫酸塩水和物、リバーロキサバン、リファブチン、ブロナンセリン、ルラシドン塩酸塩、ピモジド、エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン、エルゴメトリンマレイン酸塩、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、メチルエルゴメトリンマレイン酸塩、シルデナフィルクエン酸塩(レバチオ)、タダラフィル(アドシルカ)、バルデナフィル塩酸塩水和物、ロミタピドメシル酸塩、ベネトクラクス〈再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の用量漸増期〉、ジアゼパム、クロラゼプ酸二カリウム、エスタゾラム、フルラゼパム塩酸塩、トリアゾラム、ミダゾラム、リオシグアト、ボリコナゾール、アパルタミド、カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、ホスフェニトインナトリウム水和物、リファンピシン、セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品
- ③腎機能又は肝機能障害のある患者で、コルヒチンを投与中の患者
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部分条件(次のいずれかの重症化リスク因子を有する) |
- 60歳以上
- BMI25kg/m²超
- 喫煙者(過去30日以内の喫煙があり、かつ生涯に100本以上の喫煙がある)
- 免疫抑制疾患又は免疫抑制剤の継続投与
- 慢性肺疾患(喘息は、処方薬の連日投与を要する場合み)
- 高血圧の診断を受けている
- 心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、一過性虚発作、心不全、ニトログリセンが処方された狭心症、冠動脈バイパス術、経皮的冠動脈形成術、頚動脈内膜剥離術又は大動脈バイパス術の既往を有する)
- 1型又は2型糖尿病
- 慢性腎臓病
- 神経発達障害(脳性麻痺、ダウン症候群等)又は医学的複雑性を付与するその他の疾患(遺伝性疾患、メタボリックシンドローム、重度の先天異常等)
- 限局性皮膚がんを除く活動性の癌
- 医療技術への依存( SARS -CoV -2による感染症と無関係な持続陽圧呼吸療法 等)等
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- ※重症化リスク因子の詳細は、令和5年3月3日厚生労働省通知「新型コロナウイルス感染症における経口抗ウイルス薬(パキロビッド)の医療機関及び薬局への配分について」(PDF:1,113KB)別紙4ページ以降の記載をご覧ください。
- ※本剤の使用にあたっては、併用禁忌及び併用注意の薬剤が多数あることから、処方時には、服薬中のすべての薬剤を確認してください。
- ※中等度の腎機能障害患者(コルヒチンを投与中の患者を除く)に対しては、用法・用量が異なるためご留意ください。重度の腎機能障害患者への投与は推奨しないこととなっています。
- ※妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとなっています。
- ※授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討することとなっています。
- ※小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施しておりません。
- ※HIV感染患者
- (ア)本剤はリトナビルを含むため、未治療又はコントロール不良のHIV感染患者に投与した場合、HIVプロテアーゼ阻害剤に対する耐性が生じる可能性があります。
- (イ)リトナビル又はコビシスタットを含む抗HIV療法と本剤を併用する場合、リトナビルの用量調節は不要です。
- ※肝機能障害のある患者(コルヒチンを投与中の患者を除く)
リトナビルは主に肝臓で代謝されるため、高い血中濃度が持続するおそれがあります。また、トランスアミナーゼの上昇を合併している患者では肝機能障害を増悪させるおそれがあります。
(3)「モルヌピラビル」(販売名:ラゲブリオ)の場合
基本条件 |
- 投与の時点で発症日から5日以内
- 18歳以上
- 次の投与禁止の項目に該当しないこと確認してください
- ① 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- ② 妊婦又は妊娠している可能性のある女性
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部分条件(次のいずれかの重症化リスク因子を有する) |
- 61歳以上
- 活動性の癌(免疫抑制又は高い死亡率を伴わない癌は除く)
- 慢性腎臓病
- 慢性閉塞性肺疾患
- 肥満(≧BMI30)
- 重篤な心疾患(心不全、冠動脈疾患又は心筋症)
- 糖尿病
- ダウン症
- 脳神経疾患(多発性硬化症、ハンチントン病、重症筋無力症等)
- コントロール不良のHIV感染症およびAIDS
- 肝硬変等の重度の肝臓疾患
- 肝硬変等の重度の肝臓疾患
- 臓器移植後、骨髄移植、幹細胞移植後 など
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新型コロナウイルス感染症の経口抗ウイルス薬「モルヌピラビル」(販売名:ラゲブリオ)については、令和4年9月16日から、「ニルマトレルビル・リトナビル」(販売名:パキロビッドパック)については、令和5年3月22日から、「エンシトレルビルフマル酸」(販売名:ゾコーバ錠125mg)令和5年3月31日から薬価収載品として、一般流通が開始されました。登録センターを通じた国購入品の配分は終了しました。
(1)所有権の移転について
令和5年5月23日時点で、既に配分済みの国購入品は厚生労働省から医療機関に無償譲渡され所有権が移転されました。一定の要件に基づき認められる再譲渡につきましては、以下事務連絡をご参照の上、適切な運用をお願いいたします。詳細については薬剤毎の事務連絡をご確認ください。
(2)投与にあたって
ア 留意事項
投与にあたっては「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第10.0版」(令和5年8月21日)、及び日本感染症学会から示されている「COVID-19に対する薬物治療の考え方第15.1版」(令和5年2月14日)による最新の指針等を参照してください。
※原則として、PCR、抗原検査などによりCOVID-19の確定診断がついていない患者は薬物治療の適応とはなりませんのでご注意ください。
新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 第10.0版(令和5年8月21日)(PDF:8,147KB)
COVID-19に対する薬物治療の考え方 第15.1版(令和5年2月14日)(PDF:685KB
イ 使用期限について
現在承認されている新型コロナウイルス感染症治療薬の使用期限については製剤の外箱に印字されている「使用期限」と実際に「使用して差し支えない期限」が異なる場合があります。
下記厚生労働省ホームページにて期限をご確認ください。
現在承認されている治療薬の使用期限について(外部サイトへリンク)
ウ お問い合わせ先
- (ア)ゾコーバに関すること
- 塩野義製薬株式会社 医療情報センター
- TEL:0120-956-734 (受付時間:9時00分 -17時30分 /土日祝及び休業日を除く)
- (イ)パキロビッドに関すること
- パキロビッドパック専用ダイヤル
- TEL:0120-661-060(受付時間:9時00分~17時30分/日祝を除く)
- (ウ)ラゲブリオに関すること
- MSDカスタマーサポートセンター(新型コロナウイルス感染症治療薬専用)